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据え付けのピアノ美男子夏に逝く 魅歌 [日記・雑感]

渡哲也さんの想い出をすこし。
1982~1983年ごろであったか。
夜の銀座では、ジャズソングを演奏するミュージシャンが大変に重宝されていた。
歌い手も同様で、二十歳をいくつか過ぎたほんの小娘であった私も、
歌手として”夜の街”で仕事をしていた。

ある初夏の夜、
瀟洒な店内に薄物や和装のホステスが
たくさんいる一店に出演していた。

白いグランドピアノが据え付けられ、
音楽の好きな客はピアノを囲むように座れる。
ピアニストは大ヴェテランの男性で、休憩時間には姿を消す。
なんでも、店を掛け持ちしていたそうな。まさにバブルの時代。

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すらりとした男性が数人、店に入ってきた。
先頭に渡哲也さん、後ろに舘ひろし、三浦友和ほか、4~5人をしたがえていたはずだが、
他のひとたちが完全に見劣りしていたのを覚えている。
ホステスたちは駆け寄り、一同は奥のスペースへ。
暫くしてバンドの休憩タイム、掛け持ちピアニストは消え、
私がカウンターにひとり座っていると、渡さんがつかつかと歩いてきた。
「いい歌でした。何か飲みますか?」と覗き込んだ。
初心だった私は、あまりの美男子ぶりにどぎまぎ。
「では、コーヒーをいただきます」と答えたらしい。

でっぷりしたバーテンダーがソーサーにカップを乗せて差しだすと、
渡さんがいたずらっぽく、
「知ってるかい?このコーヒー、五千円なんだよ」とひとこと。
ああ、泡と消えた時代。

”スターらしいスター”も消えていく。渡さん、どうぞ安らかに・・・

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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.65『1984』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1984年 イギリス映画 マイケル・ラドフォード監督『1984』
(1984/Nineteen Eighty Four)
 
ユートピア(utopia)の反義語はディストピア(dystopia)、
”理想郷”に反し”暗黒郷””地獄郷”と訳すらしい。
日本語にされるとぞっとするが、ディストピアが舞台とされるSF映画は数多ある。
むしろ、ユートピアが舞台となる映画なんて、作られる意味がない。
 
ジョージ・オーウェルの原作をマイケル・ラドフォードが映画化した本作、
ファースト・シーンから、嫌気満載。
カラー作品であるのに色彩が無く、
人間が人間らしい感情を持てない世界を強調する。
 
そして、登場するのは主人公に扮するジョン・ハート。
シワの目立つ痩せた細面に東洋人のような腫れ瞼。
楽しそうな顔が想像できない、クセのある役どころで真価を発揮した俳優。
『エイリアン』での衝撃的な役を、メル・ブルックス『スペース・ボール』で
セルフ・パロディしちゃう茶目っ気もあるから、
イメージよりは楽しいひとだったのかなあ・・・

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貧困と無知を植えつけ、洗脳する。歴史を改竄し、懐柔する。
昔、SFとして観た本作が、
この時世に観かえすと身近な脅威として迫ってくる気がする。
真実を知り、自己を持ち続けなければ未来は開けない。
リチャード・バートンの遺作ともなった本作、
職人ラドフォードは職人であるからこそ、この原作に挑んだのかも。
ちなみに彼はジャズ・ピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニのドキュメンタリー
『情熱のピアニズム』も手がけている。
 

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夏空や窓辺の席の横並び 魅歌 [日記・雑感]

時間が出来たので、5か月ぶりに老舗の洋食店でランチ。
新宿育ちの我々にとり、馴染みの一店。
報道によれば、お盆休みが始まり都内は人出が少ないとのことだが、全くそのとおり!
 
広めの店内に我々以外は2~3人の客。やったあ!
 
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な、なんと、人気の窓際のボックス席が横並びになっている!
時世により、一人客を並べようということか。
まあ、いいじゃない。
森田芳光監督のエポックメイキング作品『家族ゲーム』といこうじゃないの。
美加はご贔屓の豆腐ステーキ・セット、我がパートナーは鰺フライ定食を注文し、シェア。
 
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ほんとうに久しぶりだから、デパートでも見て歩きたかったが、
ランチ後に外に出ると人出が増えてきた様子、
そそくさとパーキングへ向かう。
目的もなく人のなかに居る気分にはなれないもの。
外出しないあいだに、『住友ビル』がすっかりリニューアルしていた。
ちょっとした浦島太郎気分だなあ・・・・・

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夏旺ん想い出の地の品とどく 魅歌 [日記・雑感]

水曜日は生徒のレッスンが終わるころ、
長女の瑠奈の夫SHUちゃんの実家より、
素敵な品が届きました!
尾道の添加物なしの練り物!
 
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遠い昔、『みちのく国際映画祭』のステージで歌った際に、
大林宜彦監督ご夫妻と知り合い、
その後に「今夏は尾道で撮影しているから、
                遊びにいらっしゃい」と言っていただきながら、
結局、仕事に追われて行けずにいたのです。
いつか、訪れたいなあ・・・
 
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風味豊かな練り物を味わい、
自由に旅のできる通常の世界に想いを馳せます。
監督の亡きあと、
遺作『海辺の映画館 キネマの玉手箱』は生き続けています!

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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.64『いつも心に太陽を』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1967年 アメリカ・イギリス映画 ジェームス・クラヴェル監督『いつも心に太陽を』
(To Sir,with Love)

「映画に言葉はいらない」とチャップリンは教えてくれたが、
言葉を愉しむ映画もあって良い。
シドニー・ポワティエ主演作品を観るたび、
心地よく歯切れのよい台詞回しに酔いしれる。
知的なイメージの黒人俳優として道を切り拓いてきた
ポワティエならではの、唱えるような台詞回し。
加えて、スーツの似合うすらりとした長身ときらめく笑顔は、
すこぶる映像的であるから、もうそれだけでエンタテイメント性十分。

ほんとうに久しぶりに本作を観かえした。
初めて観たのは’70年代のリヴァイヴァル上映かなあ。
青春の真っ只中であったはず。

いつも心に太陽を.jpeg いつも心に太陽を②.jpeg

ポワティエ扮するマーク・サッカレーが赴任した
ロンドンの中学校には、貧しい家の生徒ばかりが在籍。
帰宅しても仕事や手伝いがあるため、とうぜん勉強はできない、
きちんとした言葉遣いもできない者ばかり。
そこで、ポワティエの台詞回しが活きてくる!
学園ものの先駆け的映画ではあるが、ありがちなプロットが並ぶのは否めない。
でもでも、ポワティエがかっこいいから、
気持ちがいい、スカッとする。ラスト・シーンもゴキゲン!

黒人男優にして初のオスカーに輝いた
『野のユリ』(’63)
”My name is Mr.Tibbs"のキメ台詞にこころ奮い立つ
『夜の大捜査線』(’67)
美加のレパートリーでもある”The Glory of Love"がテーマソングとして使われた
『招かれざる客』(’67)
’60年代のポワティエ作品、観なおしたくなっちゃうなあ!

ちなみにオスカーを受けた二人目の黒人俳優デンゼル・ワシントンは、
授賞式でアリーナ席にいるポワティエに向け、
トリビュートの言葉を捧げたっけ・・・!

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