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据え付けのピアノ美男子夏に逝く 魅歌 [日記・雑感]

渡哲也さんの想い出をすこし。
1982~1983年ごろであったか。
夜の銀座では、ジャズソングを演奏するミュージシャンが大変に重宝されていた。
歌い手も同様で、二十歳をいくつか過ぎたほんの小娘であった私も、
歌手として”夜の街”で仕事をしていた。

ある初夏の夜、
瀟洒な店内に薄物や和装のホステスが
たくさんいる一店に出演していた。

白いグランドピアノが据え付けられ、
音楽の好きな客はピアノを囲むように座れる。
ピアニストは大ヴェテランの男性で、休憩時間には姿を消す。
なんでも、店を掛け持ちしていたそうな。まさにバブルの時代。

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すらりとした男性が数人、店に入ってきた。
先頭に渡哲也さん、後ろに舘ひろし、三浦友和ほか、4~5人をしたがえていたはずだが、
他のひとたちが完全に見劣りしていたのを覚えている。
ホステスたちは駆け寄り、一同は奥のスペースへ。
暫くしてバンドの休憩タイム、掛け持ちピアニストは消え、
私がカウンターにひとり座っていると、渡さんがつかつかと歩いてきた。
「いい歌でした。何か飲みますか?」と覗き込んだ。
初心だった私は、あまりの美男子ぶりにどぎまぎ。
「では、コーヒーをいただきます」と答えたらしい。

でっぷりしたバーテンダーがソーサーにカップを乗せて差しだすと、
渡さんがいたずらっぽく、
「知ってるかい?このコーヒー、五千円なんだよ」とひとこと。
ああ、泡と消えた時代。

”スターらしいスター”も消えていく。渡さん、どうぞ安らかに・・・

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