SSブログ

”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.62『イマジン』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

2012年 ポーランド・ポルトガル・仏・英 合作映画
アンジェイ・ヤキモフスキ監督『イマジン』
(Imagine)

白状を持たずに歩ける盲目の男。彼に惹かれる盲目の女。彼らを取り巻く盲目の子ら。
 
ポーランドのアンジェイ・ヤキモフスキが”反響定位”を題材に、
実際に盲人である子どもたちを起用した稀有な作品。
きわめて寓話的かつロマンティックなところが興味深い。
 
リスボンにある、古風なたたずまいの診療所。
古い修道院が無償で建物を提供し、
世界各国から集まった視覚障害者たちに治療やトレーニングを行っている。
ひとりの若い男がやってくる。
白状を持たず、全く目のまえの状況を把握しているように振る舞う男イアン。
 
イマジン.jpg イマジン②.jpg
 
本作を観て初めて知った”反響定位”という方法。
イアンは舌を鳴らし、指を鳴らし、白状なしで自在に歩く。
端正な面差しをよく見ると、額や頬に細かい傷や痣が見受けられる。
”反響定位”の会得者であっても、
時には物にぶつかったり、転んだりしている証拠だ。
子らはイアンに興味津々、「あの先生、ほんとうは見えるんじゃない?」と。
ブロンドと美脚をもつ孤独な外国人エヴァも、
イアンの自由さに憧れはじめる・・・
 
ポーランドはアンジェイ・ワイダを始めとして、
”ア”の項で紹介した異色傑作『アンナと過ごした4日間』のイエジー・スコリモフスキ、
クシシュトフ・キエシェロフスキ他、
名作・名匠が名を馳せる映画大国であるが、自国での映画製作が主流。
ポルトガルに各国から俳優を集めて映画製作をしたポーランド人作家は、
ヤキモフスキが初めてではないか。
 
美加の生涯の一冊にサン・テグジュペリの『星の王子様』がある。
「本当に美しいものは目に見えない」という言葉を、
この映画は想い起こさせてくれる。 

nice!(0)  コメント(0)