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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.65『1984』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1984年 イギリス映画 マイケル・ラドフォード監督『1984』
(1984/Nineteen Eighty Four)
 
ユートピア(utopia)の反義語はディストピア(dystopia)、
”理想郷”に反し”暗黒郷””地獄郷”と訳すらしい。
日本語にされるとぞっとするが、ディストピアが舞台とされるSF映画は数多ある。
むしろ、ユートピアが舞台となる映画なんて、作られる意味がない。
 
ジョージ・オーウェルの原作をマイケル・ラドフォードが映画化した本作、
ファースト・シーンから、嫌気満載。
カラー作品であるのに色彩が無く、
人間が人間らしい感情を持てない世界を強調する。
 
そして、登場するのは主人公に扮するジョン・ハート。
シワの目立つ痩せた細面に東洋人のような腫れ瞼。
楽しそうな顔が想像できない、クセのある役どころで真価を発揮した俳優。
『エイリアン』での衝撃的な役を、メル・ブルックス『スペース・ボール』で
セルフ・パロディしちゃう茶目っ気もあるから、
イメージよりは楽しいひとだったのかなあ・・・

1984②.jpg 1984.jpg
 
貧困と無知を植えつけ、洗脳する。歴史を改竄し、懐柔する。
昔、SFとして観た本作が、
この時世に観かえすと身近な脅威として迫ってくる気がする。
真実を知り、自己を持ち続けなければ未来は開けない。
リチャード・バートンの遺作ともなった本作、
職人ラドフォードは職人であるからこそ、この原作に挑んだのかも。
ちなみに彼はジャズ・ピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニのドキュメンタリー
『情熱のピアニズム』も手がけている。
 

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