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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.79『雨月物語』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1953年 日本映画 溝口健二監督 『雨月物語』

西洋のホラー映画より断然、
日本の幽霊映画のほうがこわい。
今は亡き伯父(母の義兄)から、
霊魂や魑魅魍魎の話を幼いころに訊いていたからかもしれない。
京大と同文書院を出たインテリであった伯父は、
倉敷のお寺に婿入りし、大僧正となった人。
葬儀とは無縁であり、弟子たちを持ち、
悪霊を祓うなどの人助けをしていた。
89歳で亡くなるまで皺ひとつない童顔で、
何処か浮世離れした伯父であった。

雨月物語.jpg 雨月物語 (2).jpg

『雨月物語』のストーリーは確か、
祖母(母の母)から聞いたように記憶している。
貧しい農民の男が、美しい高貴な女人の屋敷へ招かれ、
日々を過ごすが、女人は幽霊であったという話。
祖母は原作を読んだのか、それとも本作を観ていたのか、
今では知る術もない。
18歳で祖父の後添いとなり、
先述の伯父を育ててから、我が母を産んだ祖母。

今回久々に観かえし、セット撮影でありながら、
臨場感あふれるカメラワークに改めて感服。
京マチ子の妖しさ、纏う着物の金糸の輝き、
果たしてどのように撮ったのか。
カラーで観たら、いったいどんな色なのだろうと、想像力を煽る。
両極を成す田中絹代の純朴な佇まいも忘れ難い。
ラスト・シーンでは観客も主人公とともに我に返り、落涙。

京マチ子は溝口健二、黒澤明、小津安二郎、成瀬巳喜男、市川崑などなど、
巨匠たちの作品で艶姿を披露、
”寅さん”のマドンナまで演じ、昨年95歳で亡くなった。
観かえしたい作品、あり過ぎ!

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