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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.72『失われた週末』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1945年 アメリカ映画 ビリー・ワイルダー監督『失われた週末』
(The Lost Weekend)
 
ビリー・ワイルダーはご贔屓の映画作家。
ストーリーテリングではハリウッド史上、未だ右に出る者はないと信じる。
空をビルが埋めてゆくニューヨークの景色、一軒のビルにカメラが近づくと、
おや?窓から何か、ぶらさがっている!
テルミンが不気味に響き、アルコール中毒である主人公の、
週末の物語が始まる。
 
レイ・ミランド扮する主人公は、売れない作家であり、
苛立ちから酒びたりの日々。
兄が養い、キャリア・ウーマンの恋人もいる贅沢者。
主人公は見捨てられないまま、まわりの期待を裏切り続ける。
甘ったれぶりが似合うレイ・ミランド。
主人公の心の葛藤とあやふやな記憶、
そしてフラッシュ・バックと繋げる脚本が見事。
小道具の工夫、鏡や影の演出もさすがワイルダー!
 
失われた週末.jpeg 失われた週末②.jpeg
 
のっぺりとした二枚目のミランドは、本作でオスカーを獲得した。
今は亡き淀川長治先生が、
「彼はそれまで、大根役者と言われていたのね、
   でも酔っぱらいを演じてアカデミー賞をとったのね」
と語っていらっしゃったっけ・・・以降、
男優がオスカー・ノミニーとなり易い役柄は、
暫くの間”アルコール中毒患者”であったそう。
 
お酒だいすきな美加ゆえ、アルコール中毒患者が主人公の映画はとても興味深い。
だって、飲むお酒がちがいすぎる。
ハリウッド映画のアル中たちは、「まず、ビールで乾杯」なんてしない。
そして、飲んでいてたのしそうではない!
 
”大根役者”とは絶対に言われなかったであろう
名優ジャック・レモンも『酒とバラの日々』でアルコールに溺れていく主人公を演じた。
鬼気迫る名演であったが、本作ではオスカーを獲れなかった。
上手く演じすぎたのかもね・・・ 

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