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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.182『首』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.182『首』
1968年 日本映画 森谷司郎監督 

吹きすさぶ風の音のなか、
雪の舞う墓前に立つ、
小林桂樹演じる主人公の姿。
その苦々しい顔が目に焼きつく。
次に、ストーリーの核心に迫るシーンが挿入され、
ずん!と現われる黒地白ヌキのタイトル『首』!
首という字は、
ほんとうに人間の首みたいだなと、
ぞっとする滑り出し。

首.jpg 首 (2).Jpg

時は第二次世界大戦中、
極寒の地の炭鉱夫が警察に連行されたまま、
不審死を遂げる。
遺族の依頼により真相を探るべく乗り出すのが、
小林桂樹扮する正木弁護士。
下川辰平、神山繁、清水将夫など
達者陣が脇を固める。
際立つのは大久保正信扮する”首切り人”、
確かに美味しい役に違いないが、
この存在感、圧巻。

クロース・アップが苦しくなる。
真相解明に対し、
狂気とも呼べる執着ぶりを発揮していく主人公。
なぜ彼はここまで、やり遂げたのか・・・?

事実である事件、
実在である正木弁護士。
ユーモラスな役どころに定評のあった
小林桂樹の鬼気迫る演技は、まさに役者魂。

”実”のある彼が演じたことにより、
劇的な事件に血が通う。
刺激的なサスペンス劇でありながら、
執拗な反戦映画でもあると信じる一作品。

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