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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.56『いそしぎ』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1965年 アメリカ映画 ヴィンセント・ミネリ監督『いそしぎ』
(The Sandpiper)
 
海を観たくなったら観たい映画がある。
朝霧のなか、悠々と横たわる海に、ジョニー・マンデルのテーマソングが重なる。
「貴方の面影は、去った後も私の夢を彩り、夜明けを照らすでしょう」という歌詞をもつ
”The Shadow of Your Smile"である。
岩に砕ける波、深紅に染まる夕焼けを映す海、
さまざまな顔をもつ海を観ることができるタイトル。
そして、浜でキャンヴァスに向かう、
エリザベス・テイラー演じるヒロイン、ローラの姿。
今回、久々に観なおし、ローラが潮風に弄ばれる黒髪を、
手ではなく筆で掻き上げる仕草に気づいた。
 
いそしぎ.jpeg いそしぎ②.jpeg
 
ローラはこの時代には珍しいシングル・マザー。
死別でも離婚でもない。17歳で妊娠し、結婚を拒んだ女性。
「50歳を過ぎて、枕ごしに見つめ合いたい相手じゃなかったから」という台詞は、
言い訳にしてはなかなかイケてる。
9歳の一人息子ダニーが入学させられるミッション・スクールの
生真面目な校長エドワードに扮するのは、当時の夫リチャード・バートン。
リズ・テイラーは生涯に於ける8回の結婚のうち、
バートンとだけは2回結婚している。
本作での二人の視線の絡み合いには、
「恋愛映画だいきらい」を豪語する美加であっても、興味津々。
 
”世紀の美女”リズのもっとも美しかった時代は18歳から22歳くらいまでと信じる。
本作撮影時は32~33歳、全体的に見るとギリギリ、
あと一歩で映画スターとしては太目と見なされる容貌。
エドワードの妻に扮した細身のエヴァ・マリー・セイントとの対比が良い。
ヒロインが画家であるという設定、
ビート族など、只の不倫物語に終わらない個性を持つ作品。
テーマソングを歌うたび、
海辺の”SHACK”とリズの美しいバスト、
夕焼けの海を反芻し続けるだろう。

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