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”大橋美加のシネマフル・デイズ”㊼『ある貴婦人の肖像』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1996年 イギリス映画 ジェーン・カンピオン監督『ある貴婦人の肖像』
(The Portrait of a Lady)

ジェーン・カンピオン作品を初めて観たときのことは良く覚えている。
確か吉祥寺の名画座であったか。
初期の短編や中編。これまで観たことのない映像であったし、新鮮な衝撃を受けた。
ほどなく『ピアノ・レッスン』(’93)でオスカー・ノミニー(三部門受賞)となり、
このニュージーランド出身の女性映画作家はハリウッドでも認識され、
世界中の映画ファンに注目されることとなった。

ある貴婦人の肖像.jpeg ある貴婦人の肖像②.jpeg

ヘンリー・ジェイムスの原作を映画化した本作は、
カンピオンが『ピアノ・レッスン』の成功の後に手がけた作品。
ファースト・シーンを観て、納得する。
ああ、まさしくカンピオンのテイスト!
女性のエロティシズムを美しく且つ官能的に映像化してくれる
カンピオン、これは現在でも貴重なこと。
ハリウッド映画に於けるアクロバティックなセックス・シーンを見て、
煽情的になる女性はまずいないものね。

舞台となるのは1872年、ヒロインのイザベルは両親を亡くし、
叔父夫婦のもとで暮らす美しく利発な若い女性。
ニコール・キッドマンが力演する。イザベルの成長物語であるが、
注目すべきは若いイザベルの性への目覚めと執着を、
男性との直接的な恋愛以外でも表現している点。
これはぜひ、世の男性が観て、女性の官能を導き出す手段として参考にして欲しい。

ストーリーがエロティシズムと遠くなっていくのがせつないが、
透明感あるニコールの魅力と、
怪優ジョン・マルコヴィッチ、
現在は売れっ子となったヴィゴ・モーテンセンから、
往年の名優シェリー・ウインタース、Sir.ジョン・ギールグッドまで、
役者も揃っている一作。
ラストにはもうひと工夫、欲しかったなあ・・・

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