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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.52『五つの銅貨』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.52『五つの銅貨』
 1959年 アメリカ映画 メルヴィル・シェイヴェルスン監督『五つの銅貨』
(The Five Pennies)
 
これでもか、これでもかと自分のネタを見せつける、
ダニー・ケイの芸風にはすこし疲れる。
しかし、久しぶりに観ると、
やはり達者なアーティストと感心するしかない。
現在は大御所となったスティーヴ・マーティン、
美加と同世代のジム・キャリーなどなど、
影響を感じられるコメディアンは多く、その功績はやはり絶大。
彼が実在のコルネット・プレイヤー&バンド・リーダーであった
レッド・ニコルズの半生をセミ・ミュージカルで魅せる本作は、
廃れぬ人気を持つ一作。家族の物語でもあるからだろうか。
一見お涙そそるつくりだが、
ミュージシャン夫婦が平穏な家庭を築く難しさには信憑性あり。
浮き沈みある業界でステージに立たなくなれば、
すぐに忘れられてしまうもの。ファンに責任はない。
母の楽屋で育ち、我が子らも楽屋で育てたから、よくわかる。
 
五つの銅貨.jpeg 五つの銅貨②い.jpeg
 
”HIMSELF”出演のルイ・アームストロングほか、
ミュージシャンやカメオ出演も多々ありの本作、
ステージのシーンはいつ観ても楽しいが、
お気に入りのシーンは、レッドの妻ボビーが雨の日、
行きつけのダイナーに来る場面。
常に強気であるレッドの才能を信じ、
仲間のミュージシャンたちにも
おもねないボビーは、つわりで気分を悪くしバスルームへ。
ミュージシャンたちは「ありゃあ、2ヶ月だな」「いや、3ヶ月だろ」などと
口にするうち、見る気のなかったレッドのアレンジ譜を声で
なぞりはじめ、いつしか管楽器のアレンジが肉声によるハーモニーとなり、
「なかなかイイじゃないか」と納得するに至る。
かくして、レッド・ニコルズ&ファイヴ・ぺニーズはブレイクしてゆくことに。
限りなく映画的、音楽映画的な、名シーンである!
 
劇中でレッドが放つ「名人はルイとビックスと僕だけ」という台詞があり、
そういえば、ビックス・バイダーベックには、
イタリアの名匠プピ・アヴァティによる伝記的映画『ジャズ・ミー・ブルース』があるが、
サッチモにはない。”HIMSELF”出演しすぎたからかしら?

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