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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.54『いとこ同士』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1959年 フランス映画 クロード・シャブロル監督『いとこ同士』
(Les Cousins)
 
”イ”から始まる手持ちの名画に移行し、4作目。
”ア”は128作中の50作を紹介したが、”イ”は数えてみたら50作しかない。
もとより、通常は撮りためた過去の名画を観なおす時間はなく、
この時世に初めて数えたが、”ア”と”イ”の差に愕然。
 
ヌーヴェル・ヴァーグという言葉を知ったのは、
1970年代の自称”名画座少女”時代。
 
 ルイ・マル作品でマイルス・デイヴィスがスコアを手がけた
『死刑台のエレヴェーター』、ジャン・リュック・ゴダール『勝手にしやがれ』、
フランソワ・トリュフォー『大人は判ってくれない』、
自分の生まれたころに作られた古い映画であるはずなのに、
なんて新鮮なんだろう、なんてかっこいいんだろうと、心底うちのめされたっけ・・・
 
 ヌーヴェル・ヴァーグについて書かれたエッセイも読みあさったが、
必ず上記の作品群と並び語られていたのが本作。
 
いとこ同士.jpeg いとこ同士②.jpeg
 
初めて観た時から、もっとも気になっていたのが、
この物語の舞台となるジャン・クロード・ブリアリ扮するポールの住む
メゾネットのアパルトマン。
親から与えられている部屋にしてはリヴィング・ルームが広く、
ポールがパーティばかり開きたくなるのも頷ける。
田舎からやってくる従弟シャルル(ジェラール・ブラン)に提供する部屋と
擦りガラスのシャワールームとの位置関係、
吹き抜けの部屋に上がる階段などなど、
何度みても興味津々。
 
主演ふたりのキャラクターをうそぶき、
「アリとキリギリスは嘘っぱちだよ」と撥ねつける
皮肉たっぷりなストーリー展開。
押し出しの強いポールを演じたブリアリは、
その後巨匠たちの作品群の脇を固めてゆくこととなる。
そして、二人を囲む生々しい女たち。
脇役のステファーヌ・オードランは当時は老け顔であったが、
本作後にシャブロル夫人にもなり、
中年を過ぎてからも味のある役どころを演じ続けた。
シャブロルもまた、晩年の意欲作は多く、観なおしていきたい。

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