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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.201『ケス』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1969年 イギリス映画 ケン・ローチ監督『ケス』(KES)
 
”ケ”から始まる手持ちの名画、
1作目はケン・ローチ作品『ケス』を何十年ぶりかで観なおす。
労働者階級に育ち、彼らの生きる姿を妥協せず描き続ける、
おん年86歳となる、イギリス映画界が誇る名匠ローチ。
本作は1990年代半ばのリヴァイヴァル上映で観た。
 
まずは、主人公の少年ビリーのやつれたような顔に驚いたことを想い出す。
目の下にクマのある15歳の男の子なんているの?という具合。
 
ケス.jpg ケス (2).jpg
 
舞台となるのはヨークシャー地方の炭坑町。
狭いベッドに兄と背中合わせに眠る小柄で
痩せっぽちのビリーの姿から映画は始まり、
 シチュエイションの全てが見てとれる。
 
父親は蒸発したらしく、男出入りの激しい母と
炭坑で働く粗暴な兄と三人暮らしのビリー。
 緑が美しい草原で時を過ごすビリーは、
”ケス”と名付けたKESTREL(小型の隼)と
過ごす時間に安らぎを見つけてゆく。
 
学校でのシーンが印象深い。
生徒たちをあからさまに見下す先生も、
めげずに出し抜こうとする悪ガキたちも然り。
 
ひとは自分の一部を踏み台にして成長しなければならない。
それを決めるのは、
生まれた土地なのか、
親なのか、学校なのか。
 
草の色に塗りこめられた色褪せることのない名作に、
ぜひ触れて欲しい。
 

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