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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.110『鬼火』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1963年 フランス映画 ルイ・マル監督『鬼火』
(Le Feu Follet)

女の顔のクロース・アップ。
甘い匂いのない肌。
男の顔のクロース・アップ。
鬼のような眼。
体を重ねたばかりとわかる男女に、
エリック・サティが雫のように降ってくる。

本作を観たのは20代であったはず。
ルイ・マル監督作の特集が名画座で組まれ全てを鑑賞したが、
本作『鬼火』には閉口した。
映像美には浸ったが、いまひとつ理解できなかったのである。
はりつめた場面を、サティのピアノ曲がほどく。
唐突にサティが流れると、映画館にいることに気づく。

鬼火.jpeg 鬼火 (2).jpeg

鏡に日付が書いてある。
モーリス・ロネ扮する主人公は、
死に魅入られ、その日に自殺するらしい。
アルコール依存症を克服し、
街に戻ってきたこの男は、
昔の友人たちを訪ねて歩く。
マルの名を世界に知らしめた『死刑台のエレベーター』(’58)で
ロネと共演したジャンヌ・モローも客演的な役どころで顔を見せる。
主人公は救われるのか?
果たして彼にとっての救いとは?
今回、30年以上を経て観かえしたが、
やはり、主人公が理解できなかった。
そんな自分に安心する。

『死刑台のエレベーター』に於けるマイルス・デイヴィス、
『好奇心』(’71)でのチャーリー・パーカーなど、
ルイ・マルはジャズを活かした作品をもつ映画作家。
洗練された作風とともに、今もってファンは多い。
ヌーヴェル・ヴァーグの時代に生きた、
クラシカルなテイストも魅力の作品群に耽溺して欲しい。  

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