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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.112『女が階段を上る時』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1960年 日本映画 成瀬巳喜男監督『女が階段を上る時』

コロナ禍となり、”夜の街”が槍玉に上げられたとき、
本作を観なおした。今回また、観なおしたことになる。
高峰秀子が扮する圭子は、銀座のバーの雇われママである。
体を張って成功を目論むホステスたちのなか、
”身の固い”ことで有名な佳人。
亡くなった夫を想いながらも、貧しい実家のためもあり、
水商売を続けている健気なヒロイン。

黒白映像が美しい。
凹凸の少ない日本人の顔を引き立てる。
脇を固める団令子、淡路恵子も適役。
成瀬&高峰コラボ作品は”ウ”の項で『浮雲』(’55)を紹介したが、
本作のほうが、親しみがある。
二十歳そこそこで、銀座のクラブで歌っていたとき、
ママやホステスさんたちに親切にして貰ったからか。
彼女たちの苦労は到底わからなかったけれど・・・

女が階段を上る時.jpeg 女が階段を上る時 (3).jpeg

本作は、人の好い三枚目がお似合いの加東大介に
思い切った役柄を負わせ、物語を弛ませない。
圭子に想いを寄せるバーテンダーの仲代達矢、
常客の森雅之が男の花を添える。
そう、この時代に”女”の映画を撮り、
男に花を添えさせたのは、成瀬だけではないか。

成瀬に苦しめられたヒロインは、さらに美しさを増してゆく。
倖せから引き離されながら、強く美しくなってゆくのだ。

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