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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.133『ガルシアの首』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1974年 アメリカ映画 サム・ぺキンパー監督『ガルシアの首』
(Bring Me the Head of Alfredo Garcia )
 
ペキンパー作品は10代の頃、
新宿駅東口から程ない名画座『新宿ローヤル』で何作か観たはず。
 
古びた建物で階段の高さが微妙に違う箇所があり、
鑑賞後に感情が昂ぶると何度かつまづきそうになった。
 
『ガルシアの首』はテレビで観たのが最初かと記憶している。
大人になって観なおしたとき、酒場のピアノ弾きベニーに扮したウォーレン・オーツが、
 ジャズソング”I’ll Remenber April”を奏でることに気づいた。
 
ベニーは大地主の娘を妊娠させた女誑しガルシアの首を獲得するべく
奔走することになるが、首の行方は・・・?
男の純情を貫こうとするウォーレン・オーツの熱演に泣ける!
 
ガルシアの首.jpg ガルシアの首 (2).jpg
 
ペキンパー作品はヴァイオレンス映画の代表のようによく言われる。
確かに銃撃戦が目立ち、登場人物の多くは死ぬが、
彼の作品には牧歌的なシーンも数ある。
すさんだ心で生きなければならない者たちが、
ひとときの安穏に身を委ねるこれらのシーンは、
銃撃戦より心に残る。
 
本作もファースト・ショットの美しさ、
全編を覆うフォルクローレなど、忘れ難い。
二転三転するストーリー・テリングも巧みであり、
若い映画ファンにもぜひ観て欲しい一作品である。

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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.132『ガス燈』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1944年 アメリカ映画 ジョージ・キューカー監督『ガス燈』
(GASLIGHT)
 
イングリッド・バーグマンは笑顔より涙の似合う女優だ。
彫りの深い面差しの奥の瞳が見開かれると、美しさが増す。
悲劇的な役柄に定評があったが、最も哀れを誘うヒロインと言えば、
初めてオスカー(主演女優賞)に輝いた本作のポーラ役だろうか。
 
物語の舞台は1875年、ロンドン。
高名で美貌の歌手であった叔母が殺害された屋敷で
新婚生活をスタートさせるポーラ。
夫となるのはシャルル・ボワイエ扮する、
かなり年上の作曲家グレゴリーである。
 
ガス燈.jpg ガス燈 (2).jpg
 
カメオのブローチ、レースのバッグ、懐中時計、そして、
繊細な模様が施されたガス燈。
戯曲の映画化に不可欠な小道具のクロース・アップを多用し、
ヒロインの幸福が揺らいでいく演出を施すキューカー監督。
追い詰められていくヒロインを、大柄な体格全身で表現するバーグマン!
まさに、女優冥利に尽きる役どころ!
 
今回、久々に観なおし、若いメイド役で個性を発揮している
アンジェラ・ランズベリー発見。当時17歳!
”オ”の項で紹介した『狼の血族』(’84)の祖母役ほか、
リアルタイムで観た映画も多く、”おばあちゃん女優”のイメージ多大だが、
若いころからアクが強く、貫禄十分だったんだなあ!

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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.131『哀しみのトリスターナ』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1969年 スペイン・イタリア・フランス合作映画 ルイス・ブニュエル監督
『哀しみのトリスターナ』
(TRISTANA)

ルイス・ブニュエル作品の”奇妙”な魅力を、
何と表現すればいいのだろう。
フェリーニ、ヴィスコンティ、ベルイマンを始めとして、
敬愛する映画作家は枚挙に暇がない。
ブニュエル作品も我が人生になくてはならないが、
すこしニュアンスが違う。
スペイン、メキシコ、フランス、アメリカなどなど、
様々な国で作品を発表してきた多作家といえるブニュエルは、
”アーティスト”と”職人”という二つの顔を持つ、稀有な存在であったのかも知れない。
超娯楽作品を撮っても、何処か”奇妙”なのが、ブニュエル映画。
それが撮影のトリックにあるのだと教えてくれたのは、
我が影響下で映画通となった倅。いささか悔しい。

ブニュエルがカトリーヌ・ドヌーヴを起用した本作は、
’80年代に特別上映か何かで劇場で観た。
パンフレットも大切にとってある。
ドヌーヴ扮する、親を亡くした
美しい娘トリスターナを養女にするのは、
フェルナンド・レイ扮するドン・ロペ。

哀しみのトリスターナ.jpg 哀しみのトリスターナ2.jpg

感謝が憎悪に変わるとき。
欲望が慈愛に変わるとき。
ブニュエルは体裁を繕わず、只々、物語を突きつける。
淡々と演じる個性の強い俳優たち。
否が応でも受け入れざるを得ないのは観客。

ドヌーヴは同じくブニュエル作品『昼顔』(’67)でも、
運命に翻弄される若き人妻を淡々と演じたが、
本作のラストで見せる凄味は絶品。
まだ、20代だからねえ!
フェルナンド・レイはブニュエルの遺作までお気に入り俳優として重宝されたが、
ハリウッドでもオスカー作品『フレンチ・コネクション』(’71)シリーズで
存在感を示したクセ者役者。我が家では”髭”と呼んでいる!

教会の鐘楼で揺れるのは・・・?トリスターナの悪夢、今夜の夢に出てきそう!


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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.130『女の都』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1980年 イタリア・フランス合作映画 フェデリコ・フェリーニ監督『女の都』
(La città delle donne)

フェリーニ作品のシンボルともいえる名優マルチェッロ・マストロヤンニが、
女の渦のなかに飛び込んでいく。
臆面もなく”スミック、スマック、スミック、スマック”と呟きながら、
女の尻を追い掛けてゆく。
これ、日本語では「よいしょ、こらしょ」の意味だそう。
本作を観てから、たまにふざけて使っている!

フェリーニ作品は初期の大傑作群を始めとして、
殆どを名画座で観ているため、本作は同じく”オ”の項で紹介した
『オーケストラ・リハーサル』(’78)同様、
リアル・タイムで観た数少ない一作品。

今回、劇場パンフレットを探し出し、当時を懐かしみながら、久々に観かえした。

女の都.jpg 女の都 (2).jpg

列車の振動音とともに現れるのは、
草が生い茂る古びたトンネル。
うわあ!フェリーニらしいメタファー!
コンパートメントでうとうとするマルチェッロ扮する
50代の”womanizer”スナポラツの前には、妖しい目つきのグラマー女。
さあ、ここからは、想像の翼をはためかせて、
フェリーニ・ワールドに耽溺するしかない!

本作で忘れられないのは、カッツォーネ(巨根)博士に扮したエットレ・マンニ。
圧倒的な存在感を示し、撮影中の事故でこの世を去った。
彼の怪演を楽しむためにも、時折に観たくなる一作である。

ニノ・ロータ亡きあとの音楽を担当したのは、
アルゼンチン出身のルイス・バカロフ。

ジャズソング”Let’s Face the Music and Dance”
”Yes,Sir.That’s My Baby” ”It Had to be You”
”Mack the Knife” ”Night and Day”などなども、陽気に流れ来る。

”オ”から始まる手持ちのDVDのうち、
30作を観かえし紹介してきたが、
次回からは”カ”に移りたい。
62作あり、どの作品を選ぼうかとワクワク!!

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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.129『オリエント急行殺人事件』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1974年 アメリカ・イギリス合作映画 シドニー・ルメット監督
(Murder on the Orient Express)
 
クセのある声が特徴的なイギリスの演技派アルバート・フィニーが、
名探偵エルキュール・ポワロに扮した唯一の作品。
大昔に原作も読んだが、やはりこのルメット版に親しみを覚える。
タイトル・バックにワルツが流れ、次々とスター俳優の名前が
アール・デコ調の文字で出てくれば、喜ばない映画ファンはいない!
各国から集まってきた、ワケアリの乗客たち。訛を聞き分けるのもまた一興。
 
オリエント急行殺人事件.jpg
 
キイ・ナンバーは"12”。12箇所の刺し傷、12人の容疑者。
雪で閉ざされた列車の瀟洒なサロンで、繰り広げられる謎解き。
シドニー・ルメット監督を知ったのは、『十二人の怒れる男』(’57)だが、
12人の陪審員のなかの一人、マーティン・バルサムが、
本作ではポワロの友人ビアンキに扮し、ムード・メイカー的役割を果たす。
乗客のひとりであるヴァネッサ・レッドグレイヴは、
”ア”の項で紹介した『アガサ/愛の失踪事件』(’79)に於いて、
アガサ・クリスティ本人に扮することとなる。
 
オリエント急行殺人事件 (3).jpg オリエント急行殺人事件 (2).jpg
 
憎まれ役をこの上なく憎々しげに演じきったリチャード・ウィドマーク、
往年の美貌とは見紛う地味な役柄で三つ目のオスカーをゲットしたイングリッド・バーグマン、
ベルギー訛で皆を煙に巻きながら、良心に賭けたポワロを熱演したアルバート・フィニー。
 
 
サウンド・トラックを手がけたのは、
ジャズ・ピアニストでもあったリチャード・ロドニー・ベネット。
ピンキー・ウィンタースの伴奏を務めたアルバム”Rain Sometimes”は愛聴盤!
ラストのサーヴィス・ショットも含め、映画人への愛を感じる、
ゴージャスなクライム・ストーリーに仕上がっている。

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