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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.131『哀しみのトリスターナ』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1969年 スペイン・イタリア・フランス合作映画 ルイス・ブニュエル監督
『哀しみのトリスターナ』
(TRISTANA)

ルイス・ブニュエル作品の”奇妙”な魅力を、
何と表現すればいいのだろう。
フェリーニ、ヴィスコンティ、ベルイマンを始めとして、
敬愛する映画作家は枚挙に暇がない。
ブニュエル作品も我が人生になくてはならないが、
すこしニュアンスが違う。
スペイン、メキシコ、フランス、アメリカなどなど、
様々な国で作品を発表してきた多作家といえるブニュエルは、
”アーティスト”と”職人”という二つの顔を持つ、稀有な存在であったのかも知れない。
超娯楽作品を撮っても、何処か”奇妙”なのが、ブニュエル映画。
それが撮影のトリックにあるのだと教えてくれたのは、
我が影響下で映画通となった倅。いささか悔しい。

ブニュエルがカトリーヌ・ドヌーヴを起用した本作は、
’80年代に特別上映か何かで劇場で観た。
パンフレットも大切にとってある。
ドヌーヴ扮する、親を亡くした
美しい娘トリスターナを養女にするのは、
フェルナンド・レイ扮するドン・ロペ。

哀しみのトリスターナ.jpg 哀しみのトリスターナ2.jpg

感謝が憎悪に変わるとき。
欲望が慈愛に変わるとき。
ブニュエルは体裁を繕わず、只々、物語を突きつける。
淡々と演じる個性の強い俳優たち。
否が応でも受け入れざるを得ないのは観客。

ドヌーヴは同じくブニュエル作品『昼顔』(’67)でも、
運命に翻弄される若き人妻を淡々と演じたが、
本作のラストで見せる凄味は絶品。
まだ、20代だからねえ!
フェルナンド・レイはブニュエルの遺作までお気に入り俳優として重宝されたが、
ハリウッドでもオスカー作品『フレンチ・コネクション』(’71)シリーズで
存在感を示したクセ者役者。我が家では”髭”と呼んでいる!

教会の鐘楼で揺れるのは・・・?トリスターナの悪夢、今夜の夢に出てきそう!


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