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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.229『恋するリベラーチェ』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

2013年 アメリカ映画 スティーヴン・ソダーバーグ監督
『恋するリベラーチェ』(Behind the Candelabra)

リベラーチェの名前を知ったのは、
ジャズクラブに出演しはじめた時代。
共演した大先輩のピアニストたちのなかで、
ジョークめかして彼の名を口にする人たちがいた。
「この曲をこう弾くと、リベラーチェになっちゃうよね」
「うわ、あの指輪、リベラーチェみたいだな!」などなど・・・。
少なくとも、ジャズ・ミュージシャンからは
揶揄される存在かとは推察するも、
いったい、どんなピアニストなのだろうかと、
想像力を膨らませたものである。
当時は写真を観ることが叶わなかったから。

恋するリベラーチェ (2).jpeg

長い年月、リベラーチェの名前は忘れ去っていた。
まさか、マイケル・ダグラスの扮装により、
彼を認識することになろうとは・・・!

父・カーク・ダグラスの迫力には及ばぬ個性ながら、
プロデューサーとしても手腕を見せる俳優という
イメージを持ち続けてきたが、本作で一気に見直した。
リベラーチェ役、パパには無理!
マイケル、よくぞやってくれた!

恋するリベラーチェ.jpeg

現在ではインターネットで容易に
御本人の写真を観ることができる。
うわあ、こういう人だったのねという具合。

本作では、クラシックとポピュラーを融合させたピアノ・プレイと
豪華絢爛な衣裳と舞台セットで大人気を博した
リベラーチェのステージが再現される。
タイトルの”Candelabra”は
彼がステージ小道具としていた枝付燭台の意味。

恋するリベラーチェ (3).jpeg

原作は晩年の恋人スコット・ソーソンによるもの。
不幸な生い立ちにより、動物を愛し獣医を目指していた
スコットに扮するのはマット・デイモン。
元来、素朴な風貌のデイモンにぴったりくる役柄。
ブロンドが痛々しい。

虚飾の権化のようなリベラーチェが、
スコットには素顔やカツラのない姿を晒し、
衰えゆく肉体に抗いつつ性愛への欲求を発散させる。
「子どもだけは欲しかった」というひとこと。
信じさせるのが役者の技量なら、
成功しているのではないかな。

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第二十二回『桃が丘リモート句会』 [日記・雑感]

日曜日は『桃が丘リモート句会』、二十二回を数えます。
兼題『桃』:あみ 『馬鈴薯』:ねぼけ猫
以上各一句ずつ、当季雑詠二句、計四句提出。
 
2022-08-21 (2)_edited.jpg
 
上段左より
裕家-有名教材会社を経て句作りを楽しむ。
魅歌-呑ん兵衛のジャズ・シンガー。
の~じ~-ジャズ&映画ファン。
 
下段左より
枕流-中国故事からの俳号を掲げる。
一哉-弱冠12歳で夏井いつき組長と
テレビ共演経験のある句歴17年の講師。
ねぼけ猫-有名広告代理店コピー・ライター。
 
不在投句
みどり-謎の俳人。”CAT PERSON”らしい。
幸人-日々フォト俳句をSNSに掲げるフォトグラファー。
洋子-厨俳句の名手か?
薫里-ジャズを愛する松山の妖精。
 
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本日の一句
 
枝豆やきみの話はつまらない ねぼけ猫
 
処暑の微睡み壊したる明け烏 裕家
 
馬鈴薯や汝はバロンかクイーンか 枕流
 
つぶしてもなほ香りたる桃の箱 みどり(不在)
 
もういいかい貰い受けたる桃に聞く の~じ~
 
鮭焼きて嗅覚少し戻りけり 洋子(不在)
 
馬鈴薯を洗う音する井戸の家 魅歌
 
(以上、一哉の添削後の句含む)
 
次回は9月18日(日)午後1時開始、興味のあるかた、
ご一報をお待ちしていますね!

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上質の本質を知る髪洗う 魅歌 [日記・雑感]

以前も書いたが、ソーイング好き。
海外のステージ衣裳はサイズが大きいため、自分で直すことは通常。
昨年からは普段着もリフォームし、楽しんでいる。
新宿にある行きつけ店のスタッフは20代~30代とおぼしき若手中心、
専門知識が豊富であり、相談もできるので、実に重宝。
ところが・・・

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先日買った生地の寸法が違っていたのである。
価格にすれば僅かではあるが、寸法が足りないと価値はゼロ!
珍しくかなり年配のスタッフであったのだが、専門的な話は良く通じていた筈なのに・・・
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何十年も通った専門店中の専門店のミスはショックが大きく、
どのようにクレイムをつけようかと一晩熟考。
翌日の開店時に電話をし、事実関係とこれまでの当店へのリスペクトを詳しく告げたところ、
「本当に申し訳ありません、上司に話して折り返します」
数分後に電話があり、「ご指定の生地をすぐに郵送致します」とのこと!
初ミスの落胆を凌ぐ処置に、さすが上質の専門店と、さらなるイメージ・アップとなった。

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ばあちゃん(義母)の手作り野菜をいただく。
曲がった胡瓜、小さなちいさな茗荷だが、侮れませんよ、味は抜群!
残暑はつのるが、元気を貰えたぞ~!

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"大橋美加のシネマフル・デイズ”No.228『午後8時の訪問者』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

2016年 ベルギー・フランス合作映画
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督
(La Fille inconnue)
 
ダルデンヌ兄弟監督の作品は10作品以上は観ているはず。
演技経験のない若者たちを起用し、手持ちカメラを使い、
あたかもドキュメンタリーのように撮った初期作品。
低予算の力強い作品群は、観客の正義感や人間としての尊厳を呼び覚ます。
今や社会派の映画作家として世界中に名を馳せるダルデンヌ兄弟である!
 
小さな町の診療所で働く若き女性医師ジェニー。
その働きぶりを目で追いながら、何科なんだろうと、まず思う。
肺疾患の老人や癲癇らしき少年、アルコール依存症女性などなど、
ジェニーを頼り、診療を受ける患者たちはあとを絶たない。
演じるのは、飾らない美貌の持ち主アデル・エネル。
そんなある夜、ジェニーは時間外にベルを鳴らした患者を断ってしまう・・・。
 
午後8時の訪問者.jpg 午後8時の訪問者 (2).jpg
 
20代の女性医師の暮らしが淡々と描かれる。
一着のコートを着まわし、ブロンドを無造作に括り、化粧っ気もない。
簡素な食事、恋人など全く見当たらない。
してしまったことのツケを、自らとことん払ってゆくジェニー。
 
ダルデンヌ作品で暴露されるショッキングな事実は、何の前触れもなく提示されるため、
 「作りもの」であるはずの映画を観ている我々は、大いにたじろぐ。
しかし実際の事件はきっと、こんなふうに起きるのだろうと、観おわったあとに思う。
そこが凄い。
 
ミステリー・タッチで語られる、目の離せない社会派劇。
アデル・エネルは本作後も、セリーヌ・シアマ作品『燃ゆる女の肖像』(2019)ほか、
 注目作に出演し、映画界卒業宣言となる。
ストイックな少女っぽさの残る本作に於けるアデルのイメージは、
映画ファンの脳裏に残りつづけるに違いない。

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"大橋美加のシネマフル・デイズ”No.227『コーヒー&シガレッツ』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

2003年 アメリカ映画 ジム・ジャームッシュ監督 
(COFFEE AND CIGARETTES)
 
17歳でフレンチ・ローストを教えられ、
コーヒーにハマった。
年上の友達もたくさん出来た。
デミタスカップでコーヒーを飲むことが
カッコイイことであり、
頭も冴える気がした。
ジャームッシュ作品と出会う、10年ほど前のこと。
 
本作はジャームッシュが長い間あたためてきた構想をまとめ上げた、コンセプト短編集。
モノクロームの画面から、煮詰めたコーヒーの匂いが漂ってくる。
そう、我が青春の彼方に香る、芳しいコーヒーじゃないのよね!
 
見当違いの出逢い、堅苦しい会話、突拍子もない出来事などなど、
只々、苦みでやり過ごすためのコーヒーが、
次から次へと注がれてゆく可笑しさ。
 
コーヒー&シガレッツ (3).jpg コーヒー&シガレッツ (2).jpg コーヒー&シガレッツ.jpg
 
煙草は十八歳で初体験、二十歳で止めた。
今でも夢のなかではたまに吸うことがある。
相手から暫し目をそらしたいとき便利なツールだが、
もう現実世界で吸うことはないだろう。
本作の数多い登場人物たちのなか、
美味しそうに煙草を吸うのは、謎の美女ひとりだけ。
あとは居ずまいの悪さを誤魔化すために
吹かしているだけに見える。
ミュージシャンとの付き合いの多いことでも知られる
ジャームッシュならではのスペシャルなキャスティングが嬉しい。
全11話の”Short Stories to Relax” さて、貴方のお気に入りは?

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