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"大橋美加のシネマフル・デイズ”No.228『午後8時の訪問者』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

2016年 ベルギー・フランス合作映画
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督
(La Fille inconnue)
 
ダルデンヌ兄弟監督の作品は10作品以上は観ているはず。
演技経験のない若者たちを起用し、手持ちカメラを使い、
あたかもドキュメンタリーのように撮った初期作品。
低予算の力強い作品群は、観客の正義感や人間としての尊厳を呼び覚ます。
今や社会派の映画作家として世界中に名を馳せるダルデンヌ兄弟である!
 
小さな町の診療所で働く若き女性医師ジェニー。
その働きぶりを目で追いながら、何科なんだろうと、まず思う。
肺疾患の老人や癲癇らしき少年、アルコール依存症女性などなど、
ジェニーを頼り、診療を受ける患者たちはあとを絶たない。
演じるのは、飾らない美貌の持ち主アデル・エネル。
そんなある夜、ジェニーは時間外にベルを鳴らした患者を断ってしまう・・・。
 
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20代の女性医師の暮らしが淡々と描かれる。
一着のコートを着まわし、ブロンドを無造作に括り、化粧っ気もない。
簡素な食事、恋人など全く見当たらない。
してしまったことのツケを、自らとことん払ってゆくジェニー。
 
ダルデンヌ作品で暴露されるショッキングな事実は、何の前触れもなく提示されるため、
 「作りもの」であるはずの映画を観ている我々は、大いにたじろぐ。
しかし実際の事件はきっと、こんなふうに起きるのだろうと、観おわったあとに思う。
そこが凄い。
 
ミステリー・タッチで語られる、目の離せない社会派劇。
アデル・エネルは本作後も、セリーヌ・シアマ作品『燃ゆる女の肖像』(2019)ほか、
 注目作に出演し、映画界卒業宣言となる。
ストイックな少女っぽさの残る本作に於けるアデルのイメージは、
映画ファンの脳裏に残りつづけるに違いない。

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"大橋美加のシネマフル・デイズ”No.227『コーヒー&シガレッツ』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

2003年 アメリカ映画 ジム・ジャームッシュ監督 
(COFFEE AND CIGARETTES)
 
17歳でフレンチ・ローストを教えられ、
コーヒーにハマった。
年上の友達もたくさん出来た。
デミタスカップでコーヒーを飲むことが
カッコイイことであり、
頭も冴える気がした。
ジャームッシュ作品と出会う、10年ほど前のこと。
 
本作はジャームッシュが長い間あたためてきた構想をまとめ上げた、コンセプト短編集。
モノクロームの画面から、煮詰めたコーヒーの匂いが漂ってくる。
そう、我が青春の彼方に香る、芳しいコーヒーじゃないのよね!
 
見当違いの出逢い、堅苦しい会話、突拍子もない出来事などなど、
只々、苦みでやり過ごすためのコーヒーが、
次から次へと注がれてゆく可笑しさ。
 
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煙草は十八歳で初体験、二十歳で止めた。
今でも夢のなかではたまに吸うことがある。
相手から暫し目をそらしたいとき便利なツールだが、
もう現実世界で吸うことはないだろう。
本作の数多い登場人物たちのなか、
美味しそうに煙草を吸うのは、謎の美女ひとりだけ。
あとは居ずまいの悪さを誤魔化すために
吹かしているだけに見える。
ミュージシャンとの付き合いの多いことでも知られる
ジャームッシュならではのスペシャルなキャスティングが嬉しい。
全11話の”Short Stories to Relax” さて、貴方のお気に入りは?

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"大橋美加のシネマフル・デイズ”No.226『恋人たちの予感』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1989年 アメリカ映画 ロブ・ライナー監督 
(When Harry Met Sally)
 
ジャズソング満載のラヴ・コメディ。
膨大な台詞の量とも相まって、ウディ・アレン作品と比較したくもなるが、
ノーラ・エフロンの脚本により、其処は女性ウケするように抑制が効いている。
メグ・ライアンは本作のヒロイン・サリー役を得て以降、
「ラヴ・コメディの女王」と呼ばれ、
暫くハリウッドに君臨することとなった。
 
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かの“一人エクスタシー演技“も、
キュートなメグのキャラクターによる勝利にほかならない。
セクシー女優であったなら、目の遣り場に困るというもの。
 
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もう一人の主人公ハリーを演じるのは
ロブ・ライナー監督の旧友でもあるビリー・クリスタル。
コモドア・レコーズ創設者ミルト・ゲイブラーを叔父にもつ、
ジャズにも素養のある名コメディアンである。
アカデミー賞授賞式司会の常連でもあり、
劇中でも器用に歌ってくれたりと大活躍。
場面に合わせた内容のジャズソングが散りばめられているあたり、
ビリーもハリー・コニックJRとともに音楽監修したのかしらと想像させる。
 
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ハリーの必死のひとこと、「一日の終わりに話したいのは君なんだ!」
これってわりと、普遍の口説き文句だったりする。
テーマに使用された「彷徨ってきたけれど、やっぱり君じゃなきゃ」
というジャズソング“It Had to be You"は我がレパートリー。
大晦日のシーンにシナトラの
ペイソスあふれるヴァージョンで流れるのも決定的なんだよねえ!

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”美加のNice’N’Easyタイム” [テレビ・ラジオ]

水曜日はラジオ番組”美加のNice’N’Easyタイム”4週分の収録。
ミュージックバード本放送ほか、全国コミュニティFM、
インターネットでも聴ける番組に成長し、17年目に入った。

実はコロナ禍の影響により、
2週間遅れての収録となる。
美加は2年余に渡り自宅から
リモート収録ゆえ難なくきているが、
スタジオ側はまだまだ弊害あり。

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プログラムをご紹介しましょう。
10月30日『PEACEFUL』
-メレディス・ダンブロッシオ、アイリーン・クラール他。
11月6日『ジャジィ・ポップス』
-シナトラ、エラなどのポップス、ロック・ナンバーなど。
11月13日『PUNCHY』
-レニー・リー、エッタ・ジョーンズ他。
11月20日『ジャズ・コーラスの魅力』
-ジャッキー&ロイ、フォア・フレッシュメン他。


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エディ・ヒギンズ夫人でもあった
メレディス・ダンブロッシオの音楽性と渋い歌唱の
ファンであった美加であるが、
今年になりFacebookで親しくなり、CD交換と相成った。

彼女が贈ってくれた近作”Sometime Ago"から4曲をオンエア。
ちなみに、トレイドした美加の14枚目のアルバム『シネマフル・ライフ』は絶賛された!
こういうことこそ、たまらなく励みになるのよねえ!  

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夏の森過去との対話かなう場所 魅歌 [日記・雑感]

2年ぶりに森へやってきた。
我がパートナーの運転で20分ほどの都心でありながら、空気感が違う。
忌まわしい2020年の夏、仕事が出来ずに口惜しい美加は、
鎮座百年祭であったこの森を歩き、随分こころ癒されたっけ・・・

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一昨年のようにアーティストによるオブジェは点在せず、
分け入っても分け入っても緑。あれ?山頭火になっちゃう。
汗もかかず、ひたすら歩ける心地よさ。
 
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木洩れ陽が、地面に木々の模様を映し幻想的でしょう!
森のことだけを考えていられるひととき。
そのうち、様々な想い出が脳裏をよぎる。
 
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池の向こうには敷物を広げられるような草地も見えるが、
とにかく今日は木陰だけを歩くと決めたから、陽の差すほうへは行かないの。
80分間ほど歩き、お腹が鳴ってきたから、帰途につく。
さあ、明日はラジオ番組”美加のNice’N’Easyタイム”4週分のリモート収録、
森の空気を蓄えて、はりきっていきましょう!
 

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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.225『恍惚の人』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1973年 日本映画 豊田四郎監督
『恍惚の人』
 
”恍惚”という、このうえなく
陶酔的な言葉の印象を一変させた有吉佐和子の原作と、
森繁久彌主演の映画化作品。
タイトルは流行り言葉にまでなった。
 
公開当時、我が最愛の祖母は60代前半にして
立派に主婦を務めていたし、
88歳で亡くなるまで、頭ははっきりしていた。
2016年に他界した我が父、今年89歳を迎えた我が母も然り。
義父母は言うまでもなく、しっかりしてくれている。
こう書いて、まったく自分は果報者と思わざるを得ない。
 
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嘗て老人性痴呆症と呼ばれた
病に蝕まれてゆく老人に扮した森繁。
撮影当時60歳に届くかどうかの
実年齢で84歳の役を、
まさに主人公が乗り移ったかのような
渾身の演技で見せる。
舅に冷遇されてきた身でありながら、
全てを引き受けることになる嫁に高峰秀子、
こちらも大熱演!
 
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黒白画面に雨が降る。
傘もささず彷徨う老人の姿で始まるところが巧い。
無駄なく物語り、観客の目を離さずに、
再び雨のシーンでクライマックスとなる。
宙を追う老人の眼と不安定なカメラワークは、
観客の恐怖心を煽る。
そういえば、
フローリアン・ゼレール監督による秀作
『ファーザー』(2020)も、
ホラー映画の如き怖さがあった。
”死”も”認知症”も、未知なるものは恐ろしい。
 
羽田澄子監督はドキュメンタリー作品
『痴呆性老人の世界』(’86)
『安心して老いるために』(’90)により、
恐怖を緩和してくれた。
すべての人間の行く末の物語、
様々な角度から観るべきかと信じる。

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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.224『恋の手ほどき』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1958年 アメリカ映画 ヴィンセント・ミネリ監督
(GIGI)

嘗て”花嫁修業”という言葉があったっけ。
でも、”愛人修業”なんて聞いたことないなあ!
仏・米ハーフでありバレリーナ出身、
’50年代のハリウッド・ミュージカルで重宝されたレスリー・キャロンが、
20代後半にさしかかりながら、
コレット原作の15歳のヒロイン・ジジに扮する。

モーリス・シュヴァリエがフランス語訛のアクセントで歌い出す滑り出し。
甥のルイ・ジュールダンともに、
新鮮なアフェアを求める富豪である。
時は1900年のパリ。
花嫁より愛人を所望する殿方に相対するのは・・・?

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赤の壁紙に赤の家具が並ぶアパートメントに、
祖母と母と暮らすジジ。
女系一家に追い打ちをかけるのは
嘗ての美女・大叔母の存在。
男性不在のこの一家、どうやら我が国でいえば
”花街の母”の世界かなとわかってくる。
33歳のプレイボーイと15歳の花街娘、最後に笑う者は?

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久々に観なおし、レスリーの演技に
ジュディ・ガーランドの影響を感じた。
ミュージカル化にはコミカルな味を出せる女優が不可欠であり、
なにしろ監督はジュディの夫君であったヴィンセント・ミネリ。
フェミニストが憤慨しそうなストーリーも、
無難にオブラートでくるまれている。

パリを舞台に仕立てられたミュージカルは
同じくレスリーがジーン・ケリーと共演した『巴里のアメリカ人』(’51)
ケリーが三人の美女と相まみえる、『羅生門』をモチーフにした『魅惑の巴里』(57’)
フランク・シナトラ、シャーリー・マックレーンに、ジュールダンが絡む『カンカン』(’60)など、
衣裳やプロダクション・デザインも十分に楽しめる。
どうぞご覧あれ!

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トマトの酸味ピザのうえ弾けをり 魅歌 [日記・雑感]

お気に入りの一店『葡萄房』に久しぶりに訪れる。
外食はランチのみ、開店と同時のみと決めて二年余。
これはこれで佳し。

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プリプリ海老と茸たっぷりのピザは、
トマトの酸味がポイント。
ガーリックをふんだんに効かせた
ボンゴレも絶品。
当店の料理は塩分控えめ、
ランチに付くサラダも然り。
小瓶のビールもよく冷えていて、
言うことなし!

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アップライト・ピアノがあり、
コロナ禍以前は定期的にライヴも行われていた。
当店は長女の瑠奈の母校である
都立富士高校の先をくねくね入ったあたり。
我が家から歩くとかなりの歩数になるため、
ホームセンターに用事のある際に
我がパートナーの運転で行くことが多い。

そうそう、我が家のささやかな前庭を改造中。
力仕事120%NGの美加、
すこし砂利をひろげるだけで、ばてる。
ガーデニングなんて命がけみたい!!!!!

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"大橋美加のシネマフル・デイズ”No.223『好色一代男』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1961年 日本映画 増村保造監督
『好色一代男』
 
井原西鶴の原作を市川雷蔵が演じる。
細面に華奢な体つき、
口を開ければ”おなご”を誉めそやす軽口ばかりの
大店のぼんぼん世之介。
 
けちん坊の父親に女中同然の使われかたをしている地味な母親。
この両親で、まともな息子に育つはずがないと、世之介に同情票あり。
「おなごたちには、おかんのようになって欲しくない、おなごは大事にせなあかん」
遊女から人妻まで、目に入る女は口説かずにいられない世之介。何処まで本気?
意外に厭味のない雷蔵の演技のお陰で、ヒョイヒョイと進む物語。
 
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水谷良重、中村玉緒、そして増村監督のミューズであった
若尾文子などなど、
衣擦れの音とともに、喘ぐ女たち。
女を愛することを生きがいとしながら、
世之介に愛された女たちには常に死の影がつきまとう皮肉。
殊に、藤原礼子が扮した浪人の後家・お梶の
狂乱シーンに於ける性愛への執着は見どころ。
 
ブラック・ユーモア満載の悲喜こもごも、
ハッピー・エンディングのないことが見え始め、
赤い腰巻をなびかせての出奔と相成る。
人間同士の色事に飽いた末、
お次は人魚と契るかと想像を駆られるラストも可笑しい。

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第二十一回『桃が丘リモート句会』 [日記・雑感]

日曜日は『桃が丘リモート句会』
コロナ禍でZOOM使用となり、もう21回目とは!
兼題『夏の空』:流樹 『月見草・待宵草』:洋子 各一句ずつ、
当季雑詠二句、計四句提出。
参加者をご紹介しましょう!

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上段左より
洋子-短歌の世界から俳句の世界へ。厨俳句の名手か?
魅歌-呑ん兵衛のジャズ・シンガー。
の~じ~-ジャズ&映画ファン。

中段左より
流樹-根性のワーキング・マザー俳人。
一哉-弱冠12歳で夏井いつき組長とTV共演経験ありの26歳講師。
枕流-中国故事を俳号にもつ音楽ファン。

下段左より
ねぼけ猫-有名広告代理店コピー・ライター。
あみ-西洋占星術師&シンガーの京美人。
裕家-有名教材会社を経て句作りを楽しむ。

不在投句
みどり-謎の俳人。”Cat Person”らしい。
月待船-”ゴールデン街の眠り姫”の異名をもつイラストレイター。

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本日の一句

緑内障診断下りて月見草 洋子

山の名をよく知る人や夏の空 ねぼけ猫

絵日記の幹をはみ出すかぶと虫 みどり(不在)

夏空に無声映画の機影かな 裕家

パーマ屋さん窓の隙間に夏の空 あみ

猛暑日の午後や歯医者の予約あり の~じ~

合宿へ向かう学生陽炎へり 流樹

月見草今宵限りの逢瀬かな 枕流

誕生日娘の香水あたらしき 月待船(不在)

月見草引き戸の在りし家の前 魅歌

(一哉の添削後の句含む)

次回は8月21日(日)午後1時スタート、
参加してみたいかた、大歓迎!
ご一報くださいね!

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