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大橋美加のシネマフル・デイズ ブログトップ
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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.231『恋ひとすじに』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1958年 仏・独 合作映画 ピエール=ガスパール・ユイ監督
『恋ひとすじに』(CHRISTINE)

2020年春から、手持ちの映画DVDを観なおしていこうと
スタートした”大橋美加のシネマフル・デイズ”
ロミー・シュナイダーについて語るのは初めてかも。
本作は1906年ウィーンが舞台のコスチュームものである。

恋ひとすじに (2).jpeg

明るいブルー・アイズとブロンド、
すこし離れた目、さほど高くない鼻。
絵に描いたような美人ではないが、
一度観たら忘れられない面差し。
仕草や表情、とりわけ笑顔が
只ひたすら愛らしいロミーを見ていると、
無垢な小動物を守りたいような気持ちに
つつまれてしまう。

本作で竜騎兵将校に扮した水も滴る美男子アラン・ドロンと
実生活でも恋に落ちたのが頷ける。

オリジナル・タイトルにある
”クリスティーネ”は、ロミー演じる主人公の名。
チェロ奏者の父と二人暮らしで、
歌姫になることを夢見る二十歳の娘。
オペラ座の出口で「管楽器がうるさい」というパパの台詞が可笑しい。

恋ひとすじに (3).jpeg

カラフルでお気楽なラヴ・コメディの如く滑り出し、
急速に様相が変わってゆく後半。まさに邦題が活きてくる。
ロミーの見ひらかれたブルー・アイズが忘れられない。

のちに自身も悲劇の只中に置かれ、
43歳の若さで他界したロミー・シュナイダー。
語るに酷い逆縁を経験しての夭折である。
晩年の作品群、ことに遺作『サン・スーシの女』(’82)の存在感は忘れ難いが、
溌溂とした乙女を演じた本作も、
ぜひ心に焼きつけて欲しい。

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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.230『ゴーストライター』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

2010年 仏・独・英 合作映画 ロマン・ポランスキー監督
『ゴーストライター』(The Ghost Writer)

映画は"色“で決まる。
映画用語でいうところの“ルック"である。
ポランスキー作品は数多く観てきたが、
これほど"ルック“にこだわった作品も珍しい。
まるで、不安を色にしたよう。

ロバート・ハリスの脚本を読んだポランスキーは
「レイモンド・チャンドラーみたいじゃないか!」と
色めき立ったそうだが、
これはヒッチコックだよねえ!
ヒッチも政治がらみのストーリーが少なくなかった。
もちろん、主人公は”巻き込まれ型”となる。

ゴーストライター (3).jpeg

元英国首相ラングの自叙伝を書くゴーストライターとして
雇われる主人公に扮するユアン・マクレガー。
如何にもスケープゴート的な童顔の憎めない二枚目半。
なにしろ、前任者は謎の死を遂げている。
ラングに扮するのは007経験者のピアース・ブロスナン。
とにかく”BRITS”がキイ・ワードのストーリー。
色を添えるオリヴィア・ウィリアムズ、
キム・キャトラル、こちらも”BRITS”

ゴーストライター (2).jpeg ゴーストライター.jpeg

孤島に垂れこめる灰色の雲、目眩ましの雨、冷たく佇む大邸宅。
騙そうとしているのは誰?命を狙われるのは何故?
陽の光の射さない世界で右往左往する、名無しの主人公。

人間不信の異端児ポランスキーが仕かけた、
クレジット・タイトルから恐怖が滲み出る戦慄の問題作。


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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.229『恋するリベラーチェ』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

2013年 アメリカ映画 スティーヴン・ソダーバーグ監督
『恋するリベラーチェ』(Behind the Candelabra)

リベラーチェの名前を知ったのは、
ジャズクラブに出演しはじめた時代。
共演した大先輩のピアニストたちのなかで、
ジョークめかして彼の名を口にする人たちがいた。
「この曲をこう弾くと、リベラーチェになっちゃうよね」
「うわ、あの指輪、リベラーチェみたいだな!」などなど・・・。
少なくとも、ジャズ・ミュージシャンからは
揶揄される存在かとは推察するも、
いったい、どんなピアニストなのだろうかと、
想像力を膨らませたものである。
当時は写真を観ることが叶わなかったから。

恋するリベラーチェ (2).jpeg

長い年月、リベラーチェの名前は忘れ去っていた。
まさか、マイケル・ダグラスの扮装により、
彼を認識することになろうとは・・・!

父・カーク・ダグラスの迫力には及ばぬ個性ながら、
プロデューサーとしても手腕を見せる俳優という
イメージを持ち続けてきたが、本作で一気に見直した。
リベラーチェ役、パパには無理!
マイケル、よくぞやってくれた!

恋するリベラーチェ.jpeg

現在ではインターネットで容易に
御本人の写真を観ることができる。
うわあ、こういう人だったのねという具合。

本作では、クラシックとポピュラーを融合させたピアノ・プレイと
豪華絢爛な衣裳と舞台セットで大人気を博した
リベラーチェのステージが再現される。
タイトルの”Candelabra”は
彼がステージ小道具としていた枝付燭台の意味。

恋するリベラーチェ (3).jpeg

原作は晩年の恋人スコット・ソーソンによるもの。
不幸な生い立ちにより、動物を愛し獣医を目指していた
スコットに扮するのはマット・デイモン。
元来、素朴な風貌のデイモンにぴったりくる役柄。
ブロンドが痛々しい。

虚飾の権化のようなリベラーチェが、
スコットには素顔やカツラのない姿を晒し、
衰えゆく肉体に抗いつつ性愛への欲求を発散させる。
「子どもだけは欲しかった」というひとこと。
信じさせるのが役者の技量なら、
成功しているのではないかな。

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"大橋美加のシネマフル・デイズ”No.228『午後8時の訪問者』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

2016年 ベルギー・フランス合作映画
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督
(La Fille inconnue)
 
ダルデンヌ兄弟監督の作品は10作品以上は観ているはず。
演技経験のない若者たちを起用し、手持ちカメラを使い、
あたかもドキュメンタリーのように撮った初期作品。
低予算の力強い作品群は、観客の正義感や人間としての尊厳を呼び覚ます。
今や社会派の映画作家として世界中に名を馳せるダルデンヌ兄弟である!
 
小さな町の診療所で働く若き女性医師ジェニー。
その働きぶりを目で追いながら、何科なんだろうと、まず思う。
肺疾患の老人や癲癇らしき少年、アルコール依存症女性などなど、
ジェニーを頼り、診療を受ける患者たちはあとを絶たない。
演じるのは、飾らない美貌の持ち主アデル・エネル。
そんなある夜、ジェニーは時間外にベルを鳴らした患者を断ってしまう・・・。
 
午後8時の訪問者.jpg 午後8時の訪問者 (2).jpg
 
20代の女性医師の暮らしが淡々と描かれる。
一着のコートを着まわし、ブロンドを無造作に括り、化粧っ気もない。
簡素な食事、恋人など全く見当たらない。
してしまったことのツケを、自らとことん払ってゆくジェニー。
 
ダルデンヌ作品で暴露されるショッキングな事実は、何の前触れもなく提示されるため、
 「作りもの」であるはずの映画を観ている我々は、大いにたじろぐ。
しかし実際の事件はきっと、こんなふうに起きるのだろうと、観おわったあとに思う。
そこが凄い。
 
ミステリー・タッチで語られる、目の離せない社会派劇。
アデル・エネルは本作後も、セリーヌ・シアマ作品『燃ゆる女の肖像』(2019)ほか、
 注目作に出演し、映画界卒業宣言となる。
ストイックな少女っぽさの残る本作に於けるアデルのイメージは、
映画ファンの脳裏に残りつづけるに違いない。

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"大橋美加のシネマフル・デイズ”No.227『コーヒー&シガレッツ』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

2003年 アメリカ映画 ジム・ジャームッシュ監督 
(COFFEE AND CIGARETTES)
 
17歳でフレンチ・ローストを教えられ、
コーヒーにハマった。
年上の友達もたくさん出来た。
デミタスカップでコーヒーを飲むことが
カッコイイことであり、
頭も冴える気がした。
ジャームッシュ作品と出会う、10年ほど前のこと。
 
本作はジャームッシュが長い間あたためてきた構想をまとめ上げた、コンセプト短編集。
モノクロームの画面から、煮詰めたコーヒーの匂いが漂ってくる。
そう、我が青春の彼方に香る、芳しいコーヒーじゃないのよね!
 
見当違いの出逢い、堅苦しい会話、突拍子もない出来事などなど、
只々、苦みでやり過ごすためのコーヒーが、
次から次へと注がれてゆく可笑しさ。
 
コーヒー&シガレッツ (3).jpg コーヒー&シガレッツ (2).jpg コーヒー&シガレッツ.jpg
 
煙草は十八歳で初体験、二十歳で止めた。
今でも夢のなかではたまに吸うことがある。
相手から暫し目をそらしたいとき便利なツールだが、
もう現実世界で吸うことはないだろう。
本作の数多い登場人物たちのなか、
美味しそうに煙草を吸うのは、謎の美女ひとりだけ。
あとは居ずまいの悪さを誤魔化すために
吹かしているだけに見える。
ミュージシャンとの付き合いの多いことでも知られる
ジャームッシュならではのスペシャルなキャスティングが嬉しい。
全11話の”Short Stories to Relax” さて、貴方のお気に入りは?

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