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大橋美加のシネマフル・デイズ ブログトップ
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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.236『恋はデジャ・ブ』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1993年 アメリカ映画 ハロルド・レイミス監督『恋はデジャ・ブ』
(The Groundhog Day)
 
ラヴ・コメディ、ヒューマン・ストーリー、
ひいてはホラーやSF的要素も加味された映画に、
ぴったりくる主人公なんているの!?
才人ハロルド・レイミスが選んだのは、
にこりともしない芸風のシニカルなコメディアン、ビル・マーレイ!
レイミスとマーレイは大ヒット・シリーズ『ゴースト・バスターズ』の仲間でもある。
 
ペンシルヴェニア州パンクスタウニーの町で
毎年2月2日に開催されている”The Groundhog Day”のフェスティヴァルが舞台。
田舎町のお祭りを取材することに辟易している気象予報士にマーレイ。
美人で誠実なプロデューサーに扮するアンディ・マクダウェルは、
当時”旬”であったチャーミングな笑顔をもつ女優。
 
恋はデジャ・ブ (2).jpeg 恋はデジャ・ブ.jpeg
 
本作をタイム・トラヴェルの”ループもの”と解釈するか、
ニーチェの思想と解釈するかは自由だが、
ポイントが、”ループ”を脱出する方法ではなく、
とりあえず”ループ”に逃げ込むことであるのが、レイミスらしさかも。
本作、コメディ要素がなかったら、ホラー映画だよねえ!
 
思えば、1990年代は恋愛映画危機時代であり、
語りつくされたラヴ・ストーリーをどうやって新生させるかに、
脚本家たちはやっきになっていたはずなのだ。
本作を書き、大ヒット作『アナライズ・ミー』『アナライズ・ユー』シリーズに繋げていった
ハロルド・レイミスが亡くなってしまったことは惜しまれる。
 
雪のあずまやでのダンス・シーンに流れる
レイ・チャールズの”You don't know me”
ラストで響くナット’キング’コールの
”Almost Like Being In Love”も忘れ難い。

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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.235『ゴジラ』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1954年 日本映画 本多猪四郎監督『ゴジラ』

何十年ぶりに観なおして愕然とする。
畳みかけるような伊福部昭のスコアが
禍々しさを煽るタイトル・バック。
見えない恐怖、見せない恐怖。
メイン・キャラクター三人(宝田明・平田昭彦・志村喬)の不毛な相容れなさ。
只々、狼狽える河内桃子の愛らしき痛ましさ。
 
ゴジラの出現に、人々の洩らす言葉。
「被爆地からやっと逃げてきたのに、
    また疎開しなきゃならない」
「天国のお父さんのところへ行こう」などなど、
戦争が深い影を落とす。
 
ゴジラ.jpeg ゴジラ (2).jpeg
 
今回観なおして、
平田昭彦演じる科学者と、
スタンリー・キューブリック作品『博士の異常な愛情』(‘64)で
ピーター・セラーズが怪演したドクター・ストレンジラヴのイメージが、
なぜか微妙に重なった。
 
人類の罪を一身に背負った化身であったはずのゴジラは
今や普遍的な偶像となり、
21世紀の我が隣町・新宿のビル上にも、
その姿を見せている。
これで良いのか?
 

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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.234『こわれゆく女』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1974年 アメリカ映画 ジョン・カサヴェテス監督
『こわれゆく女』(Woman Under the Influence)
 
ひとの心が"こわれる“瞬間を見せつける、怖い映画である。
“インディーズ映画の雄"と定義づけられてきたジョン・カサヴェテス作品は、
"オ“の項で『オープニング・ナイト』(‘77)
"ク“の項で『グロリア』(‘80)を紹介したが、
本作は『アメリカの影』(’59)とは別の意味での
実験的な要素をもつ作品であり、
カサヴェテス作品のオリジナリティを見せつける一作。
 
子育て中の主婦メイベルに扮するジーナ・ローランズは
言わずと知れたカサヴェテス夫人である名女優、
夫役には別名・刑事コロンボ(笑)のピーター・フォーク。
 
こわれゆく女 (2).jpeg こわれゆく女.jpeg
 
素朴だが働き者の夫と育ち盛りの三人の子に恵まれながら、
次第に異常な言動が目立つようになっていくメイベル。
あたかも他人の家庭を覗き見るような共犯意識を
我々観客に投げかけるカメラワークと
役者の鬼気迫る演技は、
ストーリー展開とともに凄味を増してゆく。
メイベルに救いはあるのか?
 
本作での熱演により、数々の賞にノミネート、
受賞も果たしたジーナ・ローランズ。
実生活でも三人の子を映画人に育てあげ、
夫君亡きあとも演技者として表現し続けた。
大ヒットした長男ニック・カサヴェテス監督作『きみに読む物語』(2004)での、
ジーナの演技に涙した現代若者も多いはず。
 
映画ファミリーの母、ジーナ・ローランズだが、本作には
カサヴェテス監督の母キャサリン・カサヴェテスも姑役で存在感を発揮している!

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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.233『この森で、天使はバスを降りた』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1996年 アメリカ映画 リー・デヴィッド・ズロトフ監督
『この森で、天使はバスを降りた』
(The Spitfire Grill)
 
意味深で茫漠とした邦題である。
観おわってみて初めて、名付けた配給会社の
感じかたが伝わってくるというもの。
 
アメリカの田舎町を舞台にした映画は興味深く、
とりわけ選んで観てきた気がするが、
本作は、まずファースト・シーンに注目したい。
 
この森で、天使はバスを降りた.jpeg この森で、天使はバスを降りた (2).jpeg
 
オペレイターらしき大きな瞳の若い女性が、
電話でメイン州の魅力について快活に宣伝している。
次第にカメラが引き鉄格子が見え、
刑務所内であることがわかってくる。
この州では受刑女性にこういった仕事を与えているのか。
主人公パーシーはほどなく出所し、
鄙びた町に向かっていく。
 
この森で、天使はバスを降りた (3).jpeg
 
森がある町、花崗岩が採れる町、人情と猜疑心が混在する町。
若き受難者パーシーに扮するアリソン・エリオット、
オリジナル・タイトルにある食堂(Spitfire Grill)の女主人を演じる
オスカー女優エレン・バースティン、
鬱憤を抱えた心根の良い主婦にマーシャ・ゲイ・ハーデンと、
女優陣がひときわ目立つキャスティング。
 
戦争や児童虐待など、人生に拭えない影を落とす問題を提起しながらも、
目を見はるような景観により、浄化される救いをもまた見せてくれる、
余韻の濃い一作。

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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.232『コリーナ、コリーナ』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1994年 アメリカ映画 ジェシー・ネルソン監督
『コリーナ、コリーナ』(Corrina,Corrina)

サラ・ヴォーンの歌うガーシュウィン・ナンバー
「誰も奪えぬ想い出」という歌詞をもつ
”They Can't Take That Away From Me"が聞こえてくるタイトル・バック。
若くして亡くなった女性の葬儀のシーン、黒い靴ばかり行き交う床。
テーブルの下に潜っている幼い娘モリーの目線で映画は始まる。
扮するのは撮影当時8~9歳の天才子役ティナ・マジョリーノ。

そして、登場するのが名コメディエンヌのウーピー・ゴールドバーグ。
『ゴースト/ニューヨークの幻』(’90)でオスカー(助演女優賞)、
『天使にラヴソングを・・・』(’92)シリーズの大ヒットでノリに乗っていた時期のウーピー!

コリーナコリーナ (2).jpeg コリーナコリーナ.jpeg

舞台となるのは1950年代。家並みやレトロな衣裳が目に楽しい。
ウーピー扮するコリーナは高等教育を受けた知的な女性だが、
黒人ゆえに文筆家としての一歩を踏み出せずに居る。
コリーナと、モリーを含むユダヤ人一家の心の交流の行く先は・・・?

サッチモの”You Go To My Head”
ビリー・ホリデイの”Pennies from Heaven”
ダイナ・ワシントンの”縁は異なもの”などなど、
場面に合ったジャズソングほか、既成曲が散りばめられている。
ジェシー・ネルソン監督の少女時代の想い出から生まれた、
忘れ難いヒューマン・ストーリーである。

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