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"大橋美加のシネマフル・デイズ”No.238『ゴッホ』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1990年 英・仏・蘭合作映画 ロバート・アルトマン監督
『ゴッホ』(Vincent &Theo)
 
アートだいすきの身ゆえ、画家の人生を描いた多くの映画を観てきたが、
作品数に於いて、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホを凌ぐ画家はいない。
貧困・悲惨・悲哀と劇的な要素を挙げて韻が踏めてしまうだけでなく、
やはり映画作家なら、あの色彩とタッチを映像化してみたいと思うのだろう。
 
しかしながら、ジャズと育ち”アメリカ”の群像劇を創り続けたロバート・アルトマンが、
ヴィンセントと弟テオの物語を撮るとは意外だった。
公開時にちいさな試写室で観たが、
流石はアルトマン、出だしが揮っている。
このファースト・シーンだけで
他の”ゴッホ映画”に思いきり差をつけているから、
どうか、お見逃しなく!
 
ゴッホ.jpeg ゴッホ (2).jpeg
 
薄暗い部屋で、浮浪者のような身なりで絵を描くヴィンセント。
きちんとした服装で窓辺に立つテオは、
伯父の画廊に勤め、兄を支援し続けている。
 
アルトマンは群像劇を得意とした映画作家であり、
”ウ”の項で『ウエディング』(’78)を紹介したので、参照あれ。
エピソードは星の如く散りばめるが、クドクドと説明しない。
ヴィンセントとテオのゴッホ兄弟に関しても、
観客の想像に概ねを委ねたつくりとしている。
人物を描ききることで物語った点が、
本作が絵画的な秀作となった所以かも知れない。
 
ヴィンセントには、当時20代にして天才の片鱗が見えるティム・ロス。
テオには、当時”第二のルパート・エヴェレット”と呼ばれていたポール・リース。
向日葵の黄色が、麦畑の黄色が、あなたを襲う。逃げられるか・・・?

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