"大橋美加のシネマフル・デイズ”No.222『コッポラの胡蝶の夢』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]
2007年 米・独・伊・仏・ルーマニア合作映画
フランシス・フォード・コッポラ監督
(Youth Without Youth)
(Youth Without Youth)
幻想譚という謳い文句を見るにつけ心惹かれるが、
映像化となると苦労の種に違いない。
フランシス・F・コッポラが8年間映画製作をせず、
66歳にして欲求不満に苛まれていたときに出会った
このうえなく幻想的な物語である本作の原作は、
世界的な宗教学者ミルチャ・エリアーデによるもの。
人間にとって永遠の願望とも呼ぶべき出来事が、或る男に降りかかる。
悲劇のあとの余りに唐突な変化に、男の運命は動かされてゆく。
主人公ドミニクに扮するのは、演技派ティム・ロス。
小柄な体躯に面長、くぼんだ目元、
エキセントリックな役柄が似合うこの名優は、
あっという間に観客を”幻想譚”に引きずり込む。
人は何処から来て、何処へ向かうのか。
私たちの人生の真の意味とは?
CGを押し出しすぎるとSFの印象が濃くなり、
力み過ぎるとホラーまがいにもなりがちな題材を、
抑制を効かせた演出で仕上げたコッポラ。
『ゴッド・ファーザー』(’72)の栄光を持ち出すまでもない立場でありながら、
資金繰りせずに自作を自費で作りあげるインディーズ精神に立ち還ったことに拍手!
美加がコッポラを見直した、渾身の一作である。
2022-07-26 19:27
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