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『ヒューゴの不思議な発明』 [映画]

ある日、寝室を出ると踊り場に分厚い一冊の本が置かれていた。
モノクロームの画面いっぱいに浮かび上がる男の子の顔、
『ユゴーの不思議な発明』ブライアン・セルズニック著。イラストも手がける作家である。
息子の路傍児(俳号)からひとこと、「マミー、読みなさい」と。

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「マーティン・スコセッシの最高作か!」と騒がれている『ヒューゴの不思議な発明』の原作である。
折りしもインターネット上では、本年度のオスカー・ノミネート予想が飛び交い始めていた時期。
ファンタジー作家を夢見る倅は、中古書店に小遣いを注ぎ込んで居り、ファンタジー小説にはメチャ詳しい。
たまにはいうことをきいてみるかと、仕事の合間を縫って読んでみたのである。


 
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こんな本、初めて出逢った。まるでパラパラ漫画のように画面いっぱいの黒白イラストが何頁も続き、
最後の絵と、次の頁の文章が続いていく。紙芝居のような、サイレント映画のような、本。
昨年、話題になった文字のない本、 ショーン・タン著『アライバル』より凝っている。
そして、あっと驚く展開、パンチラインが待ち受けている・・・

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ある意味ヴァイオレンスを描き続けてきた映画作家であるスコセッシが、この物語の何処に惹かれたのか?
穿った見方をすれば、オスカーを獲りやすい物語であるからか?
なぜ獲りやすいと思うのかは、敢えてここでは語らずにおくが・・・
期待より不安が先に立ち、試写室を訪れた。

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1930年代のパリを舞台に、駅で暮らす孤独な少年ヒューゴが、
父の形見であるからくり人形を通じて人生を見つけてゆく物語。
原作に於けるお気に入りのキャラクター、エティエンヌが割愛されていることにまずはガッカリ。
出演者欄に記載されているジュード・ロウが彼を演じたらいいねえと、路傍児と語り合っていたのに・・・

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スコセッシはこの”物語”に惹かれたのではなく、やはり”題材”に惚れたのだろうな。それはそれでいい。
映画がヒットして、原作を読むひとがさらに増えれば嬉しい限りであるから・・・
密やかな原石であった小説を、絢爛たるエンタテイメントに仕上げたスコセッシ。
物語の個性は失われた感があるけれど、慎ましい世界を確かに拡げてくれたのだから。

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