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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.82『海の沈黙』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1947年 フランス映画 ジャン・ピエール・メルヴィル監督『海の沈黙』
(Le Silence de la mer)

本作は 2010年に岩波ホールでロベール・ブレッソン作品『抵抗』とともに
特別上映された際に初めて観た。
『抵抗』は何十年もまえのリヴァイヴァル上映で観ていたが、
J.P.メルヴィルの本作に関しては、その際に初めて観ることが叶った。

モノローグとナレーション、
クロース・アップが海のように押し寄せてくる。
通常、登場人物同士が言葉を交わすのがドラマであるのに、
何だ、この映画は?と見入った。

海の沈黙 (2).jpg 海の沈黙.jpg

舞台となるのは1941年、フランスの地方都市。
老年の伯父と若い姪が慎ましく暮らす家の二階に、
ドイツ人将校が間借りする。
夜、伯父と姪が寛ぐ居間に降りてきて、
あくまで礼儀正しく滔々と持論を繰り広げる将校。
只々、沈黙で返す老人と姪。ドイツ表現主義の映画よろしく、
大きな影と柱時計の規則的な音に支配される空間。
いったい何が起こるのだろう?この将校は何をしたいのだろうと、
不安がつのる。

立ちかえれば、映画に於けるモノローグはタブーとも言えるわけで、
本作から台詞を除けば、ほぼ理解不可能となる。
第二次大戦中、レジスタンス活動に参加したメルヴィルは、
かなりの低予算で長編第一作である本作を作り上げた。
ジャン・ヴェルコールの原作に共鳴したとのことだが、
単に人種間の物語と受け取るより、
人間同士の対話の可能性を探るほうが興味深い。

姪のたったひとことの台詞、”アデュー”というタイトルのシャンソンを想い出す。

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