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"大橋美加のシネマフル・デイズ”No.212『小間使の日記』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1964年 フランス・イタリア合作映画 ルイス・ブニュエル監督『小間使の日記』
(Le journal d'une femme de chambre )

少女の腿に這うカタツムリ。
女性用ブーツを抱いて死んだ老人。
ブニュエル・ワールドが炸裂する、モノクローム作品である。

ブニュエルは我が映画人生に欠かせない作家であり、
我がパートナーともども大ファン。
24~25作は観ているはずだが、
まずは”カ”の項で『哀しみのトリスターナ』(’69)、
”キ”の項で『銀河』(’68)を紹介したので参照して欲しい。
ご本人にはお会い出来なかったが、
どのみち質問になど答える気がない、
筋金入りのアーティスト。
著書『INTERVIEW ルイス・ブニュエル 公開禁止令』をご一読あれ。

小間使いの日記 (2).jpg 小間使いの日記.jpg

ジャンヌ・モローの大人のエロティシズムに魅了される本作は、
車窓に流れる田園風景から始まる。
パリからやってきた、モロー扮する32歳のセレスティーヌは、
不感症の中年女当主、精力絶倫の婿、
そして”靴フェチ”の老父が暮らす邸に小間使いとして奉公することに。
屈折した家族のそれぞれを観察しながら、
不敵にかわしていくセレスティーヌ。
そのうち、世慣れした彼女の人生を変える、
陰惨な事件が起こる・・・

愛国者の名を借りて歪んだ欲望を満たそうとする人間が、
きっと存在した時代なのだろう。
シリアスな悲劇のプロットをお涙頂戴に強調せず、
フェティシズムのほうを際立たせるブニュエル。
絶倫婿に扮したミシェル・ピッコリが、
老女のメイドとまで懇ろになりたがるくだりも嗤える。

大きなビスケットをかじりながら振り向く
ジャンヌ・モローの表情が忘れられない。
  

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