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"大橋美加のシネマフル・デイズ”No.207『原爆の子』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1952年 日本映画 新藤兼人監督
 
1945年8月6日、広島に原爆が投下されて7年後、
日本映画として初めて原爆について描いた作品。
 
原爆により父母と妹を失った乙羽信子演じるヒロインは、5年ぶりに広島の土を踏む。
未だ少女っぽさの残る乙羽信子の白いつば帽が、瓦礫のなかに佇む花のよう。
 
被爆で子を産めない身体になり助産婦をしている親友とその夫、
焼けただれた顔で物乞いとなっている嘗ての使用人、
そして、施設で育っている彼の幼い孫息子に会うことになるヒロイン。
 
原爆の子 (3).jpg 原爆の子.jpg 原爆の子 (2).jpg
 
シーン転換のセンスが光る。
あっ、次にこうなるのか、という具合。
二度と起こしてはいけない悲劇を、
ひとりの若い女性のたった三日間の旅として見せてゆく。
大上段に振りかぶらず、
パーソナルに描くストーリーテリングが流石。
 
”百萬弗のゑくぼ”と呼ばれた乙羽信子とは
この作品ごろから愛人関係となり、
四半世紀ほど経った’78年に結婚、
乙羽が’94年に亡くなるまで
添い遂げることとなった新藤監督。
戦争を生き抜き、亡くなる前年まで映画を発表し続け、
2012年100歳没。
インディーズ魂にあふれた作品群は、
永遠に色褪せることはない!

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