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”大橋美加のシネマフル・デイズ”No.115『狼たちの午後』 [大橋美加のシネマフル・デイズ]

1975年 アメリカ映画 シドニー・ルメット監督『狼たちの午後』
(Dog Day Afternoon)

”Dog Day”とは「盛夏」を意味する。
当時の映画配給会社の邦題、イメージを掴みやすい。
初めて観たのは、”名画座少女”時代だろうか。

犯罪映画といえば、
登場人物が犯罪に手を染めるまでのストーリーがあり、
事件が起こり、終結までを描いてゆく。
本作では、何の前触れもなく、
いきなり事件を起こす主人公の姿を見せつけられる。
おまけに、初っ端から仲間割れ!
「なに?この連中だれ?」と、臨場感たっぷりの滑り出し。

狼たちの午後 (2).jpeg 狼たちの午後.jpeg 

『ゴッド・ファーザー』(’72)で知られていた
アル・パチーノが主人公に扮していなかったら、
まるでドキュメンタリーのような運び。
そうそう、相棒役も『ゴッド・ファーザー』で
愚鈍な次男フレドを好演したジョン・カザール。

ここで登場する、チャールズ・ダーニング扮する肥満の刑事。
『スティング』(’73)での悪徳刑事役が強烈であり、
またもや何かやらかすのではないかと、
テンション張りっ放しのまま、
次第に主人公の人物像があぶり出されてゆく。

社会派映画作家シドニー・ルメットは、
長編第一作にして色褪せない傑作『十二人の怒れる男』(’57)に於いて、
上質なスリルとサスペンスは舞台を選ばないと教えてくれた。
本作も殆ど場所を移さず、緊張感を持続させることに成功している。

銀行強盗に喝采を送る、満たされない市民の顔、顔、顔。
パチーノの大きな瞳にすべてが映る!

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